日々の症例 92 ヌック管水腫




92-1)70歳代、女性。右鼠径部腫瘤。

>画像所見 : 
US:右鼠径部皮下に約2xcm大の液貯留と軽い鼠径ヘルニアがみられる。ヘルニア内容は小腸で、探触子による軽い圧迫で、小腸は容易に還納したが、液貯留に変化はなかった。
CT:右鼠径部皮下に2xcm大のcystic lesionがみられ、矢状断像では腹腔内へと連続する索状構造物も確認できる(→)。
>診断 : 鼠径ヘルニアを伴ったヌック管水腫
>解説 : 
Nuck管水腫とは、胎生期に子宮円索の形成に伴って鼠径管内に入り込んだ腹膜鞘状突起(Nuck管)が生後も閉鎖されずに遺残し、内部に液が貯留した病態。女性の鼠径部〜外陰部の嚢胞性腫瘤として確認でき、男性の陰嚢水腫に相当する。成人女性のNuck管水腫はまれとされているが、鼠径ヘルニアとして治療されている症例も多いのかもしれない。USで嚢胞性であることが確認できれば、Nuck管水腫の診断は比較的容易であるが、鼠径管内に入り込んだヌック管が外陰部に達して、そこで嚢胞を形成した場合はバルトリン腺嚢胞や類上皮腫との鑑別を要する。
 本例は穿刺吸引で経過を見ているが、すぐに液貯留が再発する。

92-2) 70歳代、女性。左鼠径部腫瘤に気付いて来院した。 


>画像所見 : 左鼠径部に約12cmの卵円形cystic lesionがみられる。(A:大腿動脈 V:大腿静脈)
>診断 : ヌック管水腫
>解説 : 女性の鼠径部腫瘤としては鼠径ヘルニア、Nuck管水腫、リンパ節炎が代表的であり、外陰部腫瘤としてはNuck管水腫の他に、バルトリン腺嚢胞、類上皮腫、外陰子宮内膜症、aggressive angiomyxoma angiomyofibroblastomaなどが鑑別に挙がる。まず、USsolidcystic かを確認することが重要である。
 
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