日々の症例 117 脳動脈の変異  



 


117-1) 後大脳動脈


>画像所見 : 脳底動脈は脳橋の腹側を上行し、大脳脚のレベルで左右の後大脳動脈(PCA)に分岐するが、本例では右PCAは右内頚動脈から直接分岐している。
>診断 : 右後大脳動脈の変異(胎生型)
>解説 : 
胎生期には頚動脈と脳底動脈には多くの吻合枝があるが、後大脳動脈は脳底動脈系の完成と共に脳底動脈の終枝として血流を受けるようになり、内頚動脈とは後交通動脈を介してつながっている。しかしながら、本例のように内頚動脈から後交通動脈を経由して後大脳動脈が直接分岐するvariation(胎生型)も比較的高頻度(約10%)にみられる。

117-2) 遺残動脈  2症例

>画像所見 : 
症例A:左頚部の内頚動脈pars cervicalisと左椎骨動脈の間に太い吻合動脈がみられる(↑)。
症例B: 椎骨脳底動脈は低形成で、内頚動脈C4/5からの吻合動脈(→)を介して後大脳動脈が描出されている。
>診断 : 
A遺残舌下神経動脈(persistent primitive hypoglossal arteryPPHA
B:遺残三叉神経動脈persistent trigeminal arteryPPTA
>解説 : 

 内頚動脈と椎骨・脳底動脈を結ぶ胎生期の動脈の遺残としては、頭側から順に
1)遺残三叉神経動脈、2)遺残耳神経動脈3)遺残舌下神経動脈4)遺残前環椎動脈、などがあるが、
24)は極めて稀。これらは、椎骨脳底動脈の低形成を伴っていることも多い。また、この遺残動脈の分岐部だけではなく、ウィルス動脈輪などにも動脈瘤を伴いやすいことが知られており、読影に際しては留意する必要がある。

1)遺残三叉神経動脈(persistent  trigeminal artery):
 内頚動脈C4/5と脳底動脈遠位1/3を吻合する。もっとも頭側かつ高頻度。

2)遺残耳神経動脈(persistent primitive otic artery):
 内頚動脈の錐体部C5と脳底動脈を吻合する。
3)遺残舌下神経動脈(persistent primitive hypoglossal artery):
 第1〜2頚椎レベルの内頚動脈と椎骨動脈〜脳底動脈近位部を吻合する。 
4)遺残前環椎動脈(persistent proatlantal artery
 内頚あるいは外頚動脈と椎骨動脈を吻合し、椎骨動脈が内頚あるいは外頚動脈から分岐しているように見える。

117-3) 前大脳動脈の変異 2症例

>画像所見 : 
A本来の左右2本の前大脳動脈(ACA)に加えて、前交通動脈から直接分岐するAccessory anterior cerebral arteryがみられ、ACAが3本あるようにみえる。triple ACAthird ACA median ACAなどと呼ばれる
BACA近位部は1本の共通幹となっており、末梢で左右のACAに分かれている。
>診断 : Atriple ACA  Bazygos ACA
>解説 : 
MRAの進歩によって、非造影のMRIでも血管造影に劣らない詳細な血管の描出が可能になっており、ACAの血管変異を経験することも多くなった。


                                                    寺元記念病院画像診断センターへ