日々の症例 99 乳房陰影




99-1) 乳房陰影 2症例。

画像所見 : 
A50歳代、女性。乳癌術後。左乳房陰影がみられない。左肺野は全体に透過度が亢進して明るくなっているが、肺紋理は正常に追求できる。
B20歳代、女性。豊胸術後。両側中下肺が左右対称性に暗くなっている。肺紋理は正常に追求できる。
>解説 : 
A:乳癌手術は乳房温存手術、乳房温存療法(乳房温存手術+放射線照射)、および乳房切除術に大別できる。本例では左肺野はほぼ全域が明るくなっていることから、単なる左乳房切除だけでなく、胸筋合併切除も行われていることが分かる。この他にも、一側肺の透過性亢進をきたす原因としては、撮影時のポジショニング不良やX線管球の傾き(カセッテから離れた側、X線管球が傾いた側の黒化度が上昇する)、大きなブラや気胸、Swyer-James症候群、先天的な一側大胸筋の欠損あるいは低形成(Poland症候群)などがあげられる。
B:乳房に一致して左右対称性に境界明瞭な濃度上昇がみられるが、肺門理は正常に透見できる。従って、肺実質病変は否定的であり、豊胸術後を疑うことができる。

99-2) 豊胸術後 2症例

画像所見 : 
A:60歳代、女性。両側乳房陰影が異常に目立つ。CTではwater density のバッグが明らか。生理的食塩水バッグは、空のバッグ挿入後にチューブを使って生理食塩水を注入するので、注入用のバルブも確認できる(↑)。 B:70歳代、女性。両側乳房陰影が異常に目立ち、左右は対称である。CTでは高濃度のバッグが明らかで、シリコンジェルバッグと思われる。
 1950年代にはパラフィンやシリコンジェルなどを直接注入する豊胸術が行われたが、組織壊死などの合併症が多かった。1960年代にはシリコン性の袋にシリコンジェルを詰めたインプラント(シリコンジェルバッグ)が開発されたが、バッグの破損や漏出による被害もまれではなかった。その後、生理的食塩水を詰めたバッグが主流になったが、耐久性や耐圧性に劣るとされ、現在ではさらに種々のインプラントも開発されている。
 
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