日々の症例 91 先天性横隔膜へルニア





91) 出産直後の新生児。生下時からのチアノーゼと呼吸困難。

   

>画像所見(生後1時間と3時間の胸部単純写真) : 左肺野は胸腔に脱出した消化管ガスで占められ、縦隔は右方に偏位している。右肺の含気は不良でairbronchogramもみられる。腹部では胃胞や消化管ガスがみられない。
>診断 : 先天性横隔膜ヘルニア(Bochdalek hernia)
>解説 : 
先天性の横隔膜ヘルニアは生産児20003000例に1例の頻度でみられる。この大半(8590%)は横隔膜の後外側に生じるBochdalekヘルニアであるが、前内側に生じるMorgagniヘルニアや先天性食道裂孔ヘルニアも知られている。Bochdalekヘルニアはヘルニア嚢を持たない仮性ヘルニアで、横隔膜後部の大きな欠損孔から大量の腸管が胸腔に脱出するため、患側胸腔は腸管のガスで占められる。右横隔膜直下には肝臓があるため、左側に多くみられる(8090%)。腸回転異常や患側肺の低形成を合併することも多い。
 本例は生下時の涕泣もなく、直ちに挿管すると共に新生児外科に転送、手術が施行され、経過良好である。
                                                    
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