日々の症例 79 閉鎖孔ヘルニア




79-1)90歳代、女性。急速に右下腹部〜大腿部の疼痛が出現。

>画像所見 : 右外閉鎖筋と恥骨筋の間に嚢胞性腫瘤がみられる。上下のスライスで連続性を確認すればこの嚢胞性腫瘤が閉鎖孔から脱出した小腸であることが分かる。典型的な閉鎖孔ヘルニアのCT像であり、医師国家試験にも出題されている。
>診断 : 右閉鎖孔ヘルニア
>解説 : 閉鎖孔ヘルニアは大腿ヘルニアと同様、痩せ型の中高年齢婦人に好発する。来院時には嵌頓していることが多いが、前面に恥骨筋があるため視触診での診断は困難である。一方、画像診断は容易であり、医師国家試験にも出題されている。嵌頓した小腸が閉鎖神経を圧排するため強い疼痛やしびれを訴える(Howship-Romberg sign)こともある。本例は以前から下腹部の違和感があり、ヘルニアを繰り返していたと考えられる。今回、急激に疼痛が出現し、ヘルニア嵌頓を引き起こしたと考えられた。緊急手術で、閉鎖孔に嵌頓していた小腸は用手的に整復できた。

 
79-280歳代、女性。腹満、嘔吐、腹痛で救急来院。

>画像所見 :
US:恥骨の左外方で閉鎖孔から脱出した腸管がみられ、閉鎖孔ヘルニアの診断は容易。脱出腸管の壁はやや肥厚している。周囲に液貯留もみられ(*)、腸管壊死の可能性がある。
単純CT : 左閉鎖溝の濃度が上昇しており、外閉鎖筋と恥骨筋の間に脱出腸管がみられる(↑)。既出79-1)のCT像と異なり、本例では脱出腸管の境界が不鮮明で、脂肪織も混濁している。
>診断 : 左閉鎖孔ヘルニア嵌頓
>解説 : 5日前から腹満、嘔吐、腹痛があるも放置され、症状が強くなったため救急車で搬入された。緊急手術が施行されたが、嵌頓小腸はすでに壊死に陥っていた。
 閉鎖孔ヘルニアは視触診では異常を指摘できないため、診断が遅れて重篤になることも多い。原因不明のイレウスでは本症も念頭においた画像診断が重要である。

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