日々の症例 77 ウェルニッケ脳症




77)60歳代、女性。物忘れ、動眼神経麻痺、下肢脱力を主訴に来院。

>画像所見 : 中脳水道周囲にT1 強調像で淡い低信号、T2 強調像とFlair像で高信号域がみられる。
>診断 : ウェルニッケ脳症(Wernicke encephalopathy)
>解説 : MRI所見からウェルニッケ脳症を疑い、血中ビタミンB1を測定したところ著明な低下が確認された。ビタミンB群製剤の投与で症状はやや改善した。
 ウェルニッケ脳症は意識障害、眼球運動障害、運動失調をtriasとするVB1欠乏症で、基礎疾患として慢性アルコール中毒、妊娠悪阻、悪性腫瘍、重傷感染症、栄養障害などがあげられる。T2 強調像で第3脳室周囲、中脳水道周囲、乳頭体などに細胞浮腫や不完全壊死を反映した高信号がみられるのが特徴的。重症例では精神障害が残り、記銘力障害、逆行性健忘、作話を特徴とするKorsakoff 症候群に移行することも多い。

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