日々の症例 70 軟部の血管腫




70-120歳代、女性。  数年前から手首の有痛性軟部腫瘤がある

>画像所見 : MRI T2*強調像で著明な高信号を呈する分葉状腫瘤がみられ、内部に隔壁様の低信号を伴っている。T1強調像では筋肉と同程度の信号強度で、辺縁にくさび状に脂肪増生がみられる。単純X線像では、腫瘤内に静脈石と思われる小石灰化巣がみられる(↑)。
>診断 : 海綿状血管腫(cavernous hemangioma)
>解説 : 軟部組織の血管腫は乳幼児〜若年者の軟部腫瘤として好発する。皮下の無痛性腫瘤として確認されることが多いが、筋内に発生した場合は、運動による血流増加などで疼痛を生じることがある。組織学的に毛細血管性血管腫と海綿状血管腫、静脈性血管腫、混合型などに分類される。反応性と考えられる脂肪成分の増生を伴うことが多い。海綿状血管腫の30〜50%に静脈石(phlebolith)がみられ、特徴的所見とされている。

70-210歳代、男性。34ヶ月前から手が握れなくなってきた。

>画像所見 : MRI T2強調像で手掌に高信号域が広がっており、内部に索状の低信号を伴っている。脂肪抑制像(STIR)でさらに明瞭になっている。T1強調像では手掌の腫瘤は筋肉と同程度の信号強度のため、境界がはっきりしないが、腫瘤内には脂肪成分の増生がみられる。Gd造影では著明な増強効果を示す。典型的な血管腫の所見といえる。
>診断 : 手掌の血管腫
>解説 : 軟部の血管腫には石灰化(静脈石)や線維性隔壁、筋組織、脂肪などの様々な成分が含まれる。本例では脂肪増生と線維性隔壁は明らかだが、静脈石はみられなかった。手術後病理組織学的診断は毛細血管性血管腫(capillary hemangioma)であった。


<当院における脂肪抑制像の使い分け>

STIR法:
   ・基本的にT2系であり、脂肪を特異的に抑制するわけではない。
   ・撮像部位に空気や磁性体(金属異物)がある場合。
   ・撮像部位がガントリー中心にない場合。
   CHESS法で脂肪抑制にムラがある場合。
   ・主に頚部や胸部、四肢の撮像時に使用する。

 Fatsat法(CHESS法)
   ・脂肪を特異的に抑制できる。
   ・撮像部位がガントリー中心にある場合。
   ・高S/Nで撮像できる。
   ・出血と脂肪の鑑別に使用する。
   ・主に骨盤領域や造影検査等で使用する。

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