日々の症例 6 胃アニサキス




 660歳代、男性。心窩部痛(前日の夕食に刺身を食べ、夜中に23時間持続する心窩部痛があった。来院時には腹痛は軽減していた)。

>画像所見 : 胃X線検査で胃体下部に2cmほどの索状物がみられ、透視下でうねうねと動く様子が確認された。
>診断 : 胃アニサキス
>解説 : X線検査で1匹の虫体が明瞭に描出されている。
アニサキスは海産ほ乳類(イルカ、鯨など)を終宿主とする寄生虫で、アジ・イカ・イワシ・サケ・サバ・ニシンなどを中間宿主としている。中間宿主の魚の生食によって人体に入ったアニサキス幼虫は胃壁に侵入して急性アレルギー性胃炎を起こす。早いものでは約1時間後には腹痛、嘔気、嘔吐といった症状が出現する。粘膜下層の浮腫、鬱血、リンパ管拡張、好酸球浸潤が特徴的だが、重症例では全層性に炎症が波及する。本邦ではサバの刺身、サバ寿司、〆サバ等の生食後にみられることが多く、「サバにあたった」と表現されることがある。アニサキス幼虫は人体内では12週間ぐらいしか生きられないのでやがて症状は軽減するが、手っ取り早く内視鏡で虫体を摘み出せれば速やかに症状の消失をみることが多い。なお、内視鏡鉗子で虫体を摘みにくい場合は、少量のガストログラフィンを散布すれば虫体の運動が低下して摘出しやすくなると報告されている。この他に、上部消化管、特に十二指腸にみられる寄生虫症としては、糞線虫症がある。

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