日々の症例 48 孤立性上腸管膜動脈解離



 


48) 70歳代、男性。腹痛。


>画像所見 : 上腸間膜動脈(SMA)本幹に限局性拡張、および内腔に剥離内膜(intimal flap)と思われる線状エコー(←)がみられ、同部の動脈径は限局性に拡大している。引き続いて施行した造影CTでもSMAは二腔性で剥離内膜が線状低濃度(←)に確認でき、上腸間膜動脈解離と診断できる。真腔偽腔共に血流は保たれている。腹部大動脈には異常を認めない。
>診断 : 孤立性上腸間膜動脈解離
>解説 : 大動脈解離を伴わない孤立性上腸間膜動脈解離は比較的まれではあるが、腸管への血流障害の程度によっては急性腹症を惹起するため、適確な画像診断が求められる。危険因子として高血圧、喫煙、動脈硬化症、線維筋性異形性症などがあげられるが、原因不明の特発性もある。病態に応じて、経過観察や抗凝固療法、降圧療法、血管内治療、開腹手術などが選択される。本例は偽腔真腔共に血流が良好で、症状も軽度であったため、抗凝固療法で保存的に加療し、定期的にUSで経過観察を行っている。

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