日々の症例 42 回盲部の内ヘルニアと盲腸後虫垂               




42) 40歳代、女性。 右下腹部痛を主訴に来院。

  

>画像所見 : 終末回腸(*)が注腸X線検査正面像では上行結腸に重なって描出され、側面像では上行結腸の背側に位置しているのが分かる。虫垂も同様に上行結腸の背側を上行している(→)。
>診断 : 回盲部の内ヘルニア(pericecal hernia)と盲腸後虫垂(retrocecal appendix)
>解説 : 腹腔内臓器である回腸の一部が後腹膜臓器である上行結腸の背側に存在していることに気づけば、内ヘルニアの診断は容易である。盲腸後虫垂が急性虫垂炎を起こせば、腹痛の部位が通常より上方になるため診断が遅れる傾向がある。さらに、炎症は比較的早期に肝下面や右横隔膜下に波及し、膿瘍を形成しやすいので注意が必要である。
代表的な内ヘルニアとおよその頻度は以下の通り。
 1)傍十二指腸ヘルニア(55%)
 2)傍盲腸ヘルニア(15%)
 3)経腸間膜ヘルニア、大網裂孔ヘルニア(10%)
 4)Winslow孔ヘルニア(10%)
 5)S状結腸間膜ヘルニア(5%)
 6)子宮広間膜ヘルニア(5%)
文献:
1)Morton A. Meyers:Dynamic radiology of the abdomen.4th ed.、Springer-Verlag、New York、1993、539-540

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