日々の症例 41 嚢状気管支拡張症



 


41-1) 70歳代、男性。
気管支喘息で加療中。

>画像所見 : 胸部単純正面像では右下肺野内側に索状影が目立ち、嚢胞状陰影の存在も疑われる。CTでは気管支拡張が明瞭に確認できる。拡張した気管支壁の肥厚はあるが、内腔には液貯留はみられない。
>診断 : 嚢状の気管支拡張症(cystic bronchiectasis
>解説 : 気管支が不可逆性に拡張したもので、軽症なものから順に円柱状(cylindrical or tubular)、静脈瘤状(varicose)、嚢状(saccular or cystic)に分類されている。反復する気道感染による気管支壁の破壊性拡張が主な原因と考えられているが、気管支構造の異常やKartagener's 症候群、嚢胞性線維症などに伴う先天性の気管支拡張症もある。約半数で血痰がみられる。

41-2) 60歳代、女性。比較的多量の喀痰と喀血。

>画像所見 : 
chest X-p:左中下肺を中心に気管支の壁肥厚と拡張がみられる(tram-line sign)。
CT:円柱状および嚢状の気管支拡張が明らか。
>診断 : 嚢状の気管支拡張症(bronchiectasis)
>解説 : 
気管支の慢性炎症に伴う不可逆性の拡張で、併走する肺動脈より明らかに太ければ気管支拡張と判定できる。胸部単純X線写真では、合併する気管支炎あるいは少量の分泌液貯留によって肥厚した気管支壁が線路のようにみえる(tram-line sign)。さらに分泌液が気管支内腔に充満(mucoid impaction)するとfinger in glove sign を呈する。 
 ちなみに、健常な中高齢婦人で中葉や舌区の軽い気管支拡張をともなった浸潤影、結節影があれば非結核性抗酸菌症(MAC症)を疑わねばならない。

                                                    
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