日々の症例 27 浸潤性胸腺腫




27-150歳代、女性。1ヶ月前から顔のむくみが出現。

>画像所見 : 前縦隔で胸骨後面に約5x3cm大の腫瘤があり、胸骨の一部破壊と共に胸骨前面にまで進展している。皮下脂肪層にはリンパ浮腫を反映した索状影が目立つ。造影CTで腫瘍は不均一に濃染し、腫瘍内隔壁を示唆する線状のlow densityもみられる。さらに下方のレベルではリンパ節腫大のよる上大静脈の圧排もみられ、胸壁のリンパ浮腫および顔のむくみも上大静脈症候群によるものと考えられる。
>診断 : 浸潤性胸腺腫(invasive thymoma)

>解説 : 
浸潤性胸腺腫は胸腺腫の3035%を占め、周囲への直接浸潤あるいは播種性に転移する。血行性転移はまれである。胸腺腫と悪性リンパ腫が前縦隔腫瘍の代表として挙げられるが、悪性リンパ腫は前縦隔で左右対称性に増大し、造影CTで不均一に濃染することが多い。一方、浸潤性胸腺腫は石灰化を伴うことも多く(525)、比較的均一に濃染する。約半数に腫瘍内線維性隔壁がみられ、周囲への浸潤所見があれば診断は容易である。浸潤性胸腺腫と胸腺癌をまとめて悪性胸腺腫というが、両者の術前診断は難しい。

 27-270歳代、男性。重症筋無力症、胸腺腫の経過

>画像所見 (単純CT : 
A:前縦隔に分葉状の大きな腫瘤がみられる。
B13カ月前の単純CT):前縦隔に2cm大の腫瘤がみられ、胸腺腫と思われる。
診断:浸潤性胸腺腫
解説:通常、病理組織像で胸腺腫の良悪の判定は困難であり、画像診断あるいは手術所見によって非浸潤性と浸潤性に分類される。浸潤性胸腺腫は周囲へ直接浸潤あるいは播種性に転移することが多く、血行性転移はまれである。大きさに関係なく全ての胸腺種はmalignant potentialとして手術が勧められるが、本例は手術が行われず1年後に再来院した時点では明らかな腫瘍の増大がみられ、大動脈への浸潤も疑われた。
 胸腺腫と重症筋無力症の合併はよく知られているが、特に、浸潤性胸腺腫で重症筋無力症を合併することが多いので注意を要する。

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