日々の症例 20 右大動脈弓と左鎖骨下動脈起始異常




 20) 50歳代、男性。無症状。


>画像所見 : 胸部単純X線像で大動脈弓が右側にみられ、下行大動脈も右側を下行している。食道造影(側面像)では大動脈弓のレベルで食道後壁に圧排像がみられる。
>診断 : 右側大動脈弓と左鎖骨下動脈起始異常
>解説 : 右側大動脈弓は通常の左大動脈弓の完全な鏡像であるA型(rt. aortic arch with mirror image branching)と左鎖骨下動脈起始異常を伴うB型(rt. aortic arch with aberrant lt. subclavian artery)に大別される。A型はFallot四徴などのチアノーゼを呈する先天性心疾患を98%に合併するため、発見される機会が多い。一方、B型は心疾患を合併することも少なく、無症状で経過するので偶然発見されることが多い。 
 本例は右側大動脈弓のなかでももっとも多いB型であり、左総頚動脈、右総頚動脈、右鎖骨下動脈、左鎖骨下動脈の順に大動脈弓から分岐する。左鎖骨下動脈起始部の大動脈は憩室様に突出し、食道後壁を圧排するのが特徴的である。通常は無症状であるが、動脈硬化症が進むと嚥下障害などの症状をきたすことがある。

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