日々の症例 170 骨盤うっ血症候群




17050歳代、女性。腹痛と尿潜血陽性。

>画像所見 : 子宮の両側で屈曲蛇行した静脈拡張が目立ち、拡張した左卵巣静脈へと繫がっている(←)。下大静脈が造影されていない早い時点で左卵巣静脈が濃厚に造影されており、左腎静脈からの逆行性血流が示唆される。
>診断 : 骨盤うっ血症候群(Pelvic congestion syndrome
>解説 : 
左卵巣静脈への逆行性血流や左腎静脈の走行異常(ex. retro aortic left renal veinnutcracker phenomenon)などによって骨盤内静脈の拡張、うっ血をきたした病態で、慢性の下腹部痛、過多月経、不正性器出血などの原因となる。女性の慢性腹痛の原因として重要だが、意外と知られていない。症状が強い場合には、左卵巣静脈の塞栓術が適応となる。
 拡張した左卵巣・精巣静脈は重複下大静脈や左側下大静脈と紛らわしいことがあるが、左下大静脈は左総腸骨静脈から起こることに留意すれば鑑別できる。

<メモ>
左卵巣静脈(男性では精巣静脈)は左腎静脈に合流する。右卵巣静脈(男性では精巣静脈)は直接下大静脈に合流する。

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