日々の症例 157 肺塞栓症



157肺塞栓症

157-1) 50歳代、女性。動悸と息切れで来院。

>画像所見 : 造影CTで両側肺動脈内に大きな filling defect がみられる。下大静脈内腔にも血栓と思われるdefectが明らか。両側下肢深部静脈内にも血栓がみられた。
>診断 : 肺塞栓症(pulmonary embolism

>解説 : 
肺塞栓症は長期臥床、腹部手術後、骨盤・大腿骨骨折後、肥満、悪性腫瘍、下肢静脈血栓症、静脈カテーテル留置などの医原性、右房粘液腫などに伴って生じる。突発する呼吸困難、低酸素血症の他、頚静脈怒張、胸痛、咳、血痰などがみられる。肺梗塞にまで至る肺塞栓症は比較的まれだが、発症状況などから肺塞栓症を疑えば、早急に抗凝固療法(ヘパリン1000単位/時間で持続点滴)を開始する必要がある。

<本例の胸部単純X線像の経過>

肺塞栓症の胸部単純X線像としては、以下のような所見が知られている。

 1)左34弓の突出→右室および右室流出路の拡大
 2)左2弓の突出→主肺動脈の拡大
 3)右2弓の突出→右房拡大
 4Westermark's sign:肺動脈閉塞による末梢血管影の減少・血流低下領域の透過性亢進。
 5knuckle sign:肺門部肺動脈の拡張と急峻な狭小化。
 6Hampton's hump:肺梗塞に至った場合にみられる浸潤影で、肋横角部に好発する。肺門部に向かってやや凸であることが胸水貯
   留や胸膜肥厚との鑑別点となる。

 157-260歳代、男性。労作時呼吸困難 

>画像所見 : 造影CTで両側肺動脈に大きな filling defect がみられる。
>診断 : 肺塞栓症(pulmonary embolism
>解説 : 
肺塞栓症は、胸部単純X線写真では異常を指摘できないことも多いが、造影CTを施行すれば診断は容易である。無症状のものから突然死にいたるものまで様々だが、ヘリカルCTが普及して診断が容易になったためか、原因がはっきりしない肺塞栓症も多く経験するようになった。


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