日々の症例 143 肺分画症




143-150歳代、男性。胸部単純X線写真で異常を指摘された。

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>画像所見 : 胸部単純X線写真で右心横角に腫瘤影がみられる(↓)。造影CTでは横隔膜上方のレベルで大動脈から直接分岐する異常な血管がこの腫瘤像に入り、静脈環流は肺静脈であることが分かる(←)。VR画像を作成することで、さらに血管走行の詳細がはっきりする。
>診断 : 肺分画症(intralobar pulmonary sequestration

>解説 : 
分画肺は大動脈から分岐する異常動脈から血流を受け、以下の2型に分類される。原則として正常気管支とは交通がない。
1)肺葉内肺分画症:正常肺と同一の胸膜で囲まれている。各年齢でみられ、胎生期または乳児期の感染による後天的な原因の可能性もある。分画症の75%以上を占め、下葉に好発。呼吸器感染症を繰り返すことが多く、気管支と交通を生じて嚢胞状になることもある。肺静脈に還流する。
2)肺葉外肺分画症:独自の胸膜を有し、先天性の疾患である。横隔膜ヘルニアなどの合併奇形が多く(50%)、このため小児期で発見されることが多い。ほとんどが左S10に好発。下大静脈や奇静脈系に還流する。

  143-230歳代、女性。肺炎を繰り返す。

Chest X-p:右下肺内側に境界不明瞭な陰影があり、心陰影に重なってニボー形成もみられる。
血管造影:腹腔動脈起始部から分岐して肺内に流入する太い動脈がみられ、肺静脈に還流している。
診断 : 肺分画症(intralobar pulmonary sequestration
解説 : 以前はこのように肺分画症の確定診断のために血管造影を行っていたが、CT装置の飛躍的な性能向上に伴って、前出のように血管の走行は造影CTだけで鮮明に確認できるようになっている。
<メモ>
高齢者の繰り返す肺炎では癌、若年成人の繰り返す肺炎では肺分画症を疑え!

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