日々の症例 126 腹部大動脈瘤破裂




 


126-1) 70歳代、男性。
腹部拍動性腫瘤、および同部の圧痛。

>画像所見 : 最大径6cmの腹部大動脈瘤(infrarenal type)で、同部に圧痛もみられた。壁外に混濁したfluid collectionがみられ(↑)、血腫と考えられる。
>診断 : 腹部大動脈瘤破裂
>解説 : 
一般的に上行大動脈5cm以上、下行大動脈4cm以上、腹部大動脈3cm以上なら大動脈瘤と診断する。また、動脈瘤は形態学的に紡錘状(fusiform type)と嚢状(saccular type)に分けられ、紡錘状か嚢状か紛らわしい場合は嚢状として取り扱う。
 本例は手術拒否例で、腹痛が徐々に増強するため来院した。来院時のUSで、動脈瘤周囲に血腫と考えられる混濁したfluid collectionがみられ、大動脈瘤破裂が疑われた。腹部大動脈瘤破裂は後腹膜腔へ破裂することが多いため必ずしも急激な経過をたどらないが、腹腔内に穿破すると出血性ショック死となる。

126-2) 70歳代、男性。急激な腹痛と血圧低下

>画像所見 : 腹部大動脈瘤最大短径は9cmもある。造影CTでは動脈内腔から壁在血栓内、さらに瘤外への造影剤の噴出が描出されている(→)。血腫は左後腹膜腔内に広がり、左腎は前方に圧排されている。下大静脈は虚脱しており(△)、循環血液量の低下を示唆している。
>診断 : 腹部大動脈瘤破裂
>解説 : 
大動脈瘤破裂の high riskとして以下が挙げられる。
 1)瘤の大きさが6cm以上
 2)瘤の辺縁の凹凸不整
 3)隔壁形成(仮性瘤の可能性)
 4)瘤周辺の不鮮明さ(血腫の可能性)
 5)経過観察の過程での瘤の増大(半年で5mm以上、あるいは1年で6mm以上
 6)壁在血栓内の高吸収域の出現(crescent sign
 7penetrating atherosclerotis ulcerPAU
 8)嚢状大動脈瘤は瘤の大きさに関係なく、増大傾向の有無で手術適応を判断する。

 

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