日々の症例 118 大腿骨頭壊死




 


118-1) 40歳代、男性。アルコール性肝硬変症。半年前から股関節痛がある。

>画像所見 : 
単純X-p:左大腿骨頭はやや扁平化し、硬化像も明か。関節腔は比較的良好に保たれている。
MRI:左大腿骨頭関節面にT1WIT2WI共に低信号の領域がみられる。比較的経過が長く、線維化の進んだ大腿骨頭壊死と考えられる。
>診断 : 左大腿骨頭壊死(Avascular necrosis of the femoral head
>解説 : 
大腿骨頭壊死は成人の大腿骨頭に生じる骨壊死で、原因不明の特発性が多いが、ステロイド剤の過剰投与、アルコール多飲、潜函病、膠原病、大腿骨頚部骨折後、鎌状赤血球症などが原因として挙げられる。両側性のことが多いが、本例のような片側性のこともまれではない。早期診断には骨シンチよりもMRIがさらに鋭敏とされ、有症状例での有病正診率(sensitivity )100%に近い。正常の大腿骨頭は骨髄の脂肪化を反映してT1WIで均一な高信号となるが、壊死部は低信号になることがポイント。骨頭の変形をきたす前に診断して治療を開始することが股関節機能を保つ上で重要である。本例は股関節痛が高度となったためようやく来院したアル中患者で、骨頭壊死も大量飲酒が原因と考えられる。

118-2) 40歳代、男性。大酒家。股関節痛と肝障害で来院。

>画像所見 : 
単純X-p:両側大腿骨頭関節面に軽い硬化像がみられる。
MRI:両側大腿骨頭にT1WIT2WI共に低信号の領域がみられる。T2脂肪抑制像(STIR)では低信号域の周辺に蛇行した線状の高信号(double line sign)がみられ、大腿骨頭壊死に特徴的所見とされている。
>診断 : 両側大腿骨頭壊死
>解説 : 大腿骨頭壊死は両側性が半数以上を占め、ステロイド使用およびアルコール多飲例が大半を占める。小児における特発性大腿骨頭壊死(Perthes病)は通常片側性。


                                  寺元記念病院画像診断センターへ