日々の症例 11 脳原発悪性リンパ腫





11) 60歳代、男性。物忘れがひどくなってきたため来院し、頭部CTで異常を指摘された。


>画像所見 : 左大脳深部に側脳室を圧排する不整形の淡い高信号域があり、周囲に脳浮腫を伴っている。造影CTでは比較的均一に濃染するが、境界は鮮明とはいえない。
>診断 : 脳原発悪性リンパ腫
>解説 : 本例は定位脳手術による生検でnon-Hodgkin lymphomadiffuse medium cell typeB cell)と確定診断され、メトトレキセートを主とした化学療法が施行された。 
 単純CTで脳浮腫を伴う等〜やや高吸収域を示し、造影CTで均一に濃染する代表的脳腫瘍としては転移性脳腫瘍、髄膜腫および悪性リンパ腫が挙げられる。脳悪性リンパ腫は浸潤性の性格を反映して、造影CTで転移性脳腫瘍や髄膜腫の様な辺縁の鮮明さはみられず、形状も不整形のことが多い。まれにglioblastomaのようなring enhanceを示すことがある。病理組織学的に原発性悪性リンパ腫と他臓器からの転移や直接浸潤(続発性悪性リンパ腫)を区別することは不可能だが、原発性は大脳深部と小脳虫部に好発し、続発性では軟膜や脳室上皮に発生することが多い。臓器移植やエイズなどの免疫能の低下している患者の増加に従い悪性リンパ腫の増加も指摘されている。

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